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『SSクラ部へようこそ』①
 『SSクラ部へようこそ』② 『SSクラ部へようこそ』③
『SSクラ部へようこそ』④ 『SSクラ部へようこそ』⑤ 『SSクラ部へようこそ』⑥ 
『SSクラ部へようこそ』⑦ 『SSクラ部へようこそ』⑧ 『SSクラ部へようこそ』⑨
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『SSクラ部へようこそ』⑬ 『SSクラ部へようこそ』⑭ 『SSクラ部へようこそ』⑮ 
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ネズミ②

「アキラにはムダだったようだが、レミィとリンはどうだろうな」
「納得はまったくいっていないですが、このままムダにするわけにはいかないでしょうね」
 まだ実験を続けようとするハルナさんを止めたりはしない。
 借用書は書いてもらえたけど、部費がムダになるのはちょっと嫌な気になる。せっかくだから使ってもらわないと。
 元来僕もノリが悪いわけではないので。
 果たしてあの二人はどんな反応をするのだろうか考えていたところ、僕のスマホが静かに震えた。レミィからのメールだ。
「……レミィは少し遅れるそうです」
「む。しからば、先に来るのはリンか。どんなリアクションを取ると思う?」
「泣いてしまうのではないでしょうか。リンさん、子どもっぽいところがありますから」
「私は笑顔でネズミに話しかけるに一票。夢見がちなところがあるからな」
 ハルナさんの言い方に難はあるものの、面白いリアクションが見られるかもしれないという予想は一致していた。
「よいか? リンが部室に入ってきたら悲鳴をあげよ。わたしはリンの方へとネズミを動かす」
「自分の方に迫ってくるというわけですか。わかりました」
 いつの間にか僕も仲間としてカウントされているけど、別に拒否したりはしない。
 何だかんだで僕もノリは悪くないので。
「おはようございます」
 打ち合わせが終わるとすぐにリンさんがやってきた。ハルナさんが下手くそなウインクで合図を送る。目に虫でも入ったのかな?
 冗談はともかく。
「キャッ!」
「どうしたんですかアキラ先輩? 女の子みたいな悲鳴を上げて」
「みたいな……?」
 僕は正真正銘の女の子。みたいなではない。地味にショック……。
 とはいえ。悲鳴を上げてしまった以上素に戻るわけにはいかない。いいから続けろとハルナさんが視線を送ってきていた。
「リンさん! 危ないです!」
「え?」
 視線を誘導するためにネズミの方を指差す。すると、ハルナさん操縦のネズミは動きだし、リンさんの目と鼻の先で止まった。
 真っ青になって泣き叫ぶのか。
 しゃがみ込んでメルヘンに話しかけるのか。
 一体どんな反応を見せるのか、期待に満ちた視線が向けられる。
 しかし。
 リンさんはネズミを見つめたままウンともスンとも言わなかった。それどころか身じろぎ一つしない。思わず僕とハルナさんは顔を見合わせた。
 リンさんの様子を覗うため、恐る恐る近づく。
「……ネズミを一匹見たら二十匹はいる。ということは、二十匹いたら四百匹はいるということで、四百匹いたら八千匹、八千匹いたら十六万匹……!」
 瞬きもせずにぶつぶつとつぶやき続ける声が聞こえた。
「どうした、リン! おい、しっかりしろ!」
 慌ててハルナさんが身体を揺さぶるも。
「六千四百万匹いたら十二億八っせ……」
「あ、おい!?」
 膝から崩れ落ち、そのままリンさんは気を失ってしまう。いわゆるバタンキューといった具合に。
 想像してる内に怖くなっちゃったのかな……。
 僕とハルナさんの予想は外れたけど、リンさんが子どもっぽいことに違いはなかった。