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『SSクラ部へようこそ』①
 『SSクラ部へようこそ』② 『SSクラ部へようこそ』③
『SSクラ部へようこそ』④ 『SSクラ部へようこそ』⑤ 『SSクラ部へようこそ』⑥ 
『SSクラ部へようこそ』⑦ 『SSクラ部へようこそ』⑧ 『SSクラ部へようこそ』⑨
『SSクラ部へようこそ』⑩ 『SSクラ部へようこそ』⑪ 『SSクラ部へようこそ』⑫
『SSクラ部へようこそ』⑬ 『SSクラ部へようこそ』⑭ 『SSクラ部へようこそ』⑮ 
『SSクラ部へようこそ』⑯ 『SSクラ部へようこそ』⑰ 『SSクラ部へようこそ』⑱ 
『SSクラ部へようこそ』⑲ 『SSクラ部へようこそ』⑳ 『SSクラ部へようこそ』㉑
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共通認識

 ある日の放課後。
 今日の営業も終わり、僕が帳簿をつけていると、隣に座り大人しく漫画を読んでいたリンさんの目から涙が溢れそうになっていることに気づいた。ポケットから白いハンカチを差し出す。
「ありがとうございます、アキラ先輩」
「いえ。……どうかしたのでしょうか?」
 一人黙々と帳簿をつけていたので、何があったのかわからない。
「あの、レミィ先輩が持ってきてくれたんですけど、すごく切なくって」
「とっても胸キュンな物語ヨー」
 正面で漫画を読んでいたレミィが表紙を見せてくれる。目のキラキラとした線の細い男女が描かれていた。レーベル名からして、いわゆる少女漫画と呼ばれる類いのものだ。
「ああ、その本なら僕もレミィに読ませてもらいました。とてもいい話ですよね」
「もう涙なしでは語れないですし」
 女の子らしく少女漫画の話題で盛り上がる中、一人、輪には入れずにいたハルナさんはつまらなそうに鼻を鳴らした。
「ふん。私は好かぬな。その手の漫画というのは」
「そういえば、ハルナさんが少女漫画を読んでいるところを見た覚えはありませんね。何かあるのでしょうか?」
 ハルナさんはあまり読書をする方ではない。でも、漫画となると話は別だ。単行本の発売日には本屋に寄ってから学校に来るほどの漫画好きで、家には床が抜けてしまうほど漫画があるらしい。
 しかし、そんな漫画大好きっ子のハルナさんが少女漫画を読んでいるのを、僕は見たことがなかった。
「ある。ワンパターンすぎるとは思わんか? 主人公は特別何に優れているわけでなく、そのくせ学園のアイドル的存在に好意を寄せられる。それも一人ではなく。何人もが主人公を巡って争い合う。お決まりのパターンだ」
 ハルナさんの言うことも一理ある。僕も人並みに少女漫画を読むけど、主人公がアイドル的美少女だという作品はほとんど読んだことがなかった。
 しかし。
「そういう傾向もありますが、ハルナさんが好きな少年漫画だってある程度パターンが決まっているじゃないですか。落ちこぼれだと思っていた主人公が実は天才の血筋で、次第にみんなが一目置くようになるとか」
 というよりも、ほとんどの作品は何かしらのパターンに当てはまる。それはパクりや思考の放棄などではなく、先人たちが築き上げてきたノウハウなのだ。人、それを王道と呼ぶ。
「む……やかましい! とにかく、わたしはバトルがないとイヤなんだよ!」
「なら最初からそう言えばいいでしょう」
 漫画大好きっ子なハルナさんは、格闘技大好きっ子でありアクションゲーム大好きっ子でもあった。ようするに、派手なものが大好きなのだ。
「自分もこんな素敵なデートしてみたいですし」
 一冊読み終えたリンさんが、パタンと本を閉じながら憧れを漏らす。
「ふん、ませたことを。どうせデートなどしたことないのだろう?」
「そ、それは! ……そうですけど。……そういうハルナ先輩はどうなんですか?」
「な!? 何故、わたしに問う!」
 まさかの反撃だったのか、ハルナさんはあからさまに狼狽えた。
「だって、ハルナ先輩は最年長ですし。一番人生経験豊富そうですし」
「むむむむ……」
 唸り声しか出せないハルナさんを見るに経験はないらしい。
「レミィはナッシングアルネー! アキは?」
「僕もないですね」
 僕たち二年生コンビがデートをしたことがないと告白すると、
「そうか、ないのか!」
 これまたあからさまにハルナさんは喜んだ。
「よし、ではこうしよう。今度の休み、女子高生らしくデートをしてくること! その証拠としてプリクラを撮うてくるのだ」
「そんな!? 急すぎますし!」
 リンさんが愕然とするが、ハルナさんが急なのはいつものことで、急じゃないハルナさんはハルナさんではないと言っても過言ではない。
「女子高生としてデートの一つもしたことがないのは不味かろう。それとも何か? デートをしてみたくないのか?」
 ハルナさんの理屈が正しいかはともかく、僕もお年頃の女の子として、デートをしてみたいという気持ちがないわけではない。
「レミィは大賛成ヨー! リンは?」
 それはレミィも同じようで、元気よく楽しそうに手を上げる。
「……自分もそりゃあしてみたいですし」
「なら決まりだな」
 リンさんも恥じらいながら同意したが、僕はずっと気になることがあった。ハルナさんがデートをしてくることと指令を出してからずっと。
「ちょっと待って下さい」
「何だ? 水を差すつもりか?」
「いえ、そうではなく……誰とデートをするつもりでしょうか? 僕たちの知り合いに年頃の男性はいませんよ。女子校ですから」
 デートとは一人で出来るものではない。相手が、それも異性の相手がいる。ここ七星は女子校であるため、男の子との出会いは限りなく少なかった。
「男か……」
 そいつは問題だとハルナさんが眉間に皺を寄せて悩むと、
「あ」「あ」「あ」
 三人が一斉に一人の方を見た。
「……何でみんな僕を見るのでしょうか?」
 男の子がいない代わりに、SSクラ部には男装の麗人がいた。