『と、いうわけで何かアイデアを出しましょう』
『随分ざっくりだな』
『最初はざっくりとしたアイデアからの方がいいと思います。私と己己己さんがやっているラジオなので。出来れば二人の意見を取り入れたいので』
『なるほど。ところで、これは清恵が作るの?』
『はい。とりあえず一曲は』
『ふーん、なるほどねぇ……え?』
『はい?』
 
 何かに気づいた姉御が疑問符を漏らし、それに対し、咏ノ原さんも疑問符で返す。

『とりあえずって……CDに何曲入れて売るの? シングルじゃないの?』
『とりあえず今回は四曲でミニアルバムにする予定だそうです』
『は? 何でいきなりアルバム? 普通シングルだろ。真面目にやっててもアルバム出せない人いるのにさぁ。強気すぎ』
『強気ですかね? フルじゃなくてミニですが』

 私はただのリスナーだから業界のことはわからないけど、確かにラジオの企画でアルバムを作るってあんまり聞かないような。例えフルサイズじゃなくても。

『まぁ、いいけどさ。うーん……やっぱり、このラジオの感じがわかる曲がいいんじゃないか? オープニングとかで使うんでしょ』
『そうですね。このラジオの感じ……』
『清恵は何が売りだと思う? このラジオ。聴取率一位なんだから、何かあるでしょ』
『売りですか……何でしょうね。特別、名物のコーナーもなく、ただダラダラと話しているだけだと思うのですが。話している側としてはとても楽な思いをさせていただいてますが、自分で聞きたいとは思いません』
『酷い物言い……でも、そう言われてみると、そうだよな。別にありがちな無茶ぶりがあるわけでもないから、身体張ることもないし。あたしら、普段通りだよね?』
『はい』

 普段からこんな話ばっかしてるんだ。でも、私はリスナーを代表して言いたい。私たちはそれが面白いから聞いているのだと。
『……なんだろ。あれかね? 清恵の天然ボケとあたしのツッコミがウケてるのかね?』

 そう、それだよ姉御! 天然ボケとはちょっと違うかもしれないけど。

『天然ボケ……?』
『あれ? 違う? もしかして狙ってボケてんの?』
『狙って……? ……私より、己己己さんの方がボケじゃないです?』
『はぁ!? どこがだよ?』
『だって、己己己さんの方がお年に召しているじゃないですか』
『健忘症の話じゃねぇよ!?』

 この絶妙に噛み合わない感じが人気の秘訣なのである。