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前作『SSクラ部へようこそ』はこちらから。
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『SSクラ部へようこそ2』①


・あだ名

 
 ある日の放課後。
「ハルナさん、ちょっと爪を見せてください」
「む? 何故だ?」
 本日のクラ部活動も終わり、クラ部の制服のままソファーへ横になって、だらけきっていたハルナさんに声をかける。
「最後のお客様からちょっとしたクレームがあったので」
 クレームという言葉は、どうやらハルナさんでも緊張するようで、勢いよく起き上がり、座り直した。といっても、あぐらなんですけどね。女の子なのに。
「最後……? ああ、ナゲ子か」
「ナゲ子?」
「ああ」
 最後にハルナさんが担当したお客様の名前は栗山仁美さん。一体、何をどう文字ったらナゲ子になるのだろうか。本名が○○子ならまだしも。
 少しぽっちゃりしてはいるが、外見的に特に目立ったところもないし……。というか、ナゲって何?
「ほら、いつもクラ部でナゲットを山のように頼むだろう?」
「……そういえばそうですね。って、ダメですよ。お客様の注文であだ名をつけちゃ」
「いいではないか。それだけフレンドリーだという証だ」
 フレンドリーな接客というのは確かに重要。特にクラ部には少し怪しげな感じがあるので。
「そうなのかもしれませんが……ハルナさんだって嫌でしょう?」
「む? 何がだ?」
「よく近所のコンビニで十円ガムを買ってますよね?」
 腕を組み、ハルナさんがこくりと頷く。
「そのコンビニの店員さんに十円ガムの人って呼ばれていたら、どう思いますか?」
「……確かにそれは恥ずかしやもしれぬな」
「でしょう? そういうことです」
 気難しいハルナさんが、いつもより簡単に納得してくれたので、何だか嬉しい。例え話がよかったのかな?
「うむ。今度から百円のガムを買うことにしよう」
「そういう問題ではないですからね」
「む? ボトルで買えということか?」
 ああ、しまった。例え話はやっぱりダメだ。完全にハルナさんは話が変わったと思っている。
「いえ、そうではなく……ガムからは離れてください」
「……つまり飴を買ってこいということか?」
「ですから、そうじゃなく……もう……」
 どっと疲れを感じため息をつくと、ハルナさんは不思議そうに小首を傾げた。
 このままでは僕まで目的を忘れてしまいそうだ。
 やっぱりハルナさんは難しい。